「詩心」は太陽!民衆の勝利の力

 
池田名誉会長の「世界の大学への道」

★メキシコ国立自治大学★より

 
講演の中で、私は一つのエピソードに触れた。
 
――二十世紀初期のメキシコ革命の渦中、
戦火を逃れ、国境を越えてくるメキシコ人を、
武器等を隠し持っていないか、米国の監視人が厳重にチェックしていた。
そこに、大きなショールをまとった一人のメキシコ女性が渡ってきた。
おなかのあたりが丸くふくらんでいる。
「こら、待て!」。
税官吏がどなった。
「ショールの下に何かくしているんだ」
女性は落ち着きはらって言った。
「セニョール、私にもわかりませんわ。
 女の子かもしれないし、男の子かもしれませんわ」――
 
通訳が訳し終わると、会場は大爆笑。
「よくぞ言った!」とばかりに手を打って喜ぶ学生や教員たちもいた。
危機一髪の状況さえ、笑い飛ばしていく勇気。
忍従の植民地時代も、血みどろの内乱や革命の中でも、
決して失われなかったメキシコの民の陽気さ――
私はそれを「詩心(しごころ)」と呼んだ。
詩心は芸術家だけのものではない。
いかなる歴史や人生の変転があろうが、懸命に生き抜く、
雑草の強さをもった民衆の中に、太陽の詩心が輝いている。
 
詩心とは、絶望をはね返す希望の力である。
人間を強くし、民衆と民衆を結びつける力である。
そしてまた、平和創造の源泉でもある。

 
聖教新聞 2006.12.18〜